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小川 大輝; 濱 友紀*; 浅森 浩一; 上田 匠*
物理探査, 75, p.38 - 55, 2022/00
地磁気地電流(MT)法電磁探査では、時系列を周波数スペクトルに変換することで得られる見掛比抵抗・位相曲線から、地下の比抵抗構造を把握する。短時間フーリエ変換に代わる新しいスペクトル変換手法として、窓関数に相当するウェーブレットを周波数に応じて拡縮し、広帯域の非定常信号の処理に適する連続ウェーブレット変換(CWT)がよく知られている。しかし、ウェーブレットの形状を決定する基底関数やパラメータには任意性がある。そのため、不適切なCWTの計算設定により自然電磁場の真の応答から乖離したスペクトルの値が算出されてしまう可能性があるが、時系列から周波数スペクトルに変換する際の数値誤差がMT法データ処理結果に与える影響が詳細に検証された例は無い。本研究では、0.001Hz-1Hz程度の帯域を対象とし、スペクトル変換に伴う数値誤差を抑制する観点から、MT法データ処理におけるCWTの最適な計算設定を検討した。その結果、提案する計算設定によるCWTを種々のMT法実データに適用することで、自然電磁場の真値を良く反映した見掛比抵抗・位相曲線が得られやすくなり、特に観測データのS/N比が低い場合にその優位性が示唆された。以上により、提案する計算設定は自然電磁場に対する時間・周波数両領域での分解能を良く両立でき、信頼性の高いMT応答を得るのに有効であることを確認した。